お気に入りの着物は長くきれいなままで着たいですよね。保管は、きれいな状態を保つために必要な管理。定期的な虫干しやメンテナンスをしながら、いつまでもきれいな着物を着ましょう。
いつもきれいな状態で着物を着るための保管方法や、メンテナンスなどを紹介します。
着物の保管
着物を長くきれいに着るためには、保管に十分注意する必要があります。
保管の際、注意するポイントは次の通りです。
- 湿気
- 虫
- 紫外線
これらに注意して、保管しましょう。
保管場所に注意していても、長期間入れっぱなしは厳禁です。着物を着た後や保管中にも必要なお手入れをしながら、適切に収納しましょう。
- 着物の保管は桐箪笥
- プラスチックケースにはすのこと防湿シート
- クローゼットやチェストは木製がおすすめ
- 正絹の着物はハンガーNG!
着物の保管は桐箪笥きりたんすがベスト

着物の保管には桐のタンスが良いといわれています。桐箪笥には着物の保管にピッタリの特徴があるため、昔からよく使われてきました。
桐の特徴には
- 虫を寄せ付けにくい
- 湿気の調節をする
- 燃えにくい
などがあります。
絹やウールは特に虫が付きやすい素材です。正絹の着物は桐箪笥に収納することで虫食いを防げます。
また着物の収納では湿気対策も必要です。湿気の多いところに収納すると、着物にカビが生えてしまいます。桐箪笥は調湿の役目をして中の着物を守ってくれますよ。
さらに桐には燃えにくいという特徴があります。桐は細胞の壁が薄く空気を多く含み、熱が伝わりにくくなります。表面が燃えると炭化し、内部まで熱が伝わるまで時間がかかり燃えにくいのだそうです。
プラスチックケースに収納する

洋服の収納によく使われているプラスチックケース。収納の仕方を工夫して、適切なお手入れをすることでプラスチックケースでも着物を保管できますよ。
プラスチックケースは湿気がこもりやすいため、すのこと防湿シートを使います。まず、プラスチックケースの底に防湿シートを敷きましょう。防湿シートの上にすのこを置き、その上にたとう紙に入れた着物を収納します。
プラスチックケース収納にも防虫剤は必要です。除湿シートは防虫剤と併用できるものか確認しましょう。定期的に蓋を開け、中の湿気を飛ばすとカビが生えにくくなります。
ベッド下収納用のプラスチックケースも販売されていますが、湿気が多いため着物の保管には不向きです。
クローゼットに収納する

クローゼットやチェストに着物を収納する場合は、防虫剤や湿気に気をつけましょう。チェストはパイン材や杉など木製がおすすめです。
最近はクローゼット用として桐の収納ケースや引き出しなどがあります。キャスター付きの桐の収納ボックスは、クローゼット内で使うときに便利です。
着物収納にこんなアイデアも
ポリエステルや木綿の着物をよく着る方は、シェルフ(棚板にものをのせることができる収納家具)などを利用されています。普段着る着物は、ハンガーラック収納にすると選びやすく便利です。
正絹の着物をハンガーで収納すると、生地が伸びたり裏地との釣り合いがとれなくなったりします。正絹の着物はハンガーラック収納を避けましょう。
また、ウォークインクローゼット内にオープンラックを置いてもすっきりします。たとう紙に入れた着物を重ねると、正絹の着物も多くの枚数が収納できます。
収納に必要なアイテム

桐箪笥やクローゼットで収納するために、必要なアイテムをそろえましょう。着物や帯をそのまま引き出しなどに収納するとシワや染み、虫食いなどのトラブルが発生します。どれもきれいな着物のために必要なアイテムです。
たとう紙
たとう紙とは、着物を仕立てたり購入したりしたときに着物を包んである紙のことです。
たとう紙にはシワを防止し、湿度を調節する役目があります。汚れが付かず、シミにならないようにたとう紙に入れましょう。
着物は日光や照明にも影響を受けやすいため、たとう紙に入れると光にさらされることを避けられます。
たとう紙も湿気により劣化したりシミになったりします。そのため、たとう紙が変色する前にこまめに取り換えることが必要です。
たとう紙のストックを用意しておき、虫干しなどお手入れのたびに取り換えると長くきれいな着物を着られます。

不織布
ポリプロピレンなどで作られた不織布の着物用ケースも便利です。通気性がよくホコリも付きにくいので、安心して着物を収納できます。
たとう紙のように着物を1枚ずつ収納できる保管袋、たとう紙に入れた着物を数枚入れられる保管用ケースなど形はさまざまです。防虫効果や消臭効果をプラスしてある不織布ケースもありますよ。保管する着物に合わせて選びたいですね。

防虫剤
防虫剤には次のような種類があります。
- ピレスロイド系
- パラジクロルベンゼン
- ナフタリン
- 樟脳
ピレスロイド系はにおいがないため、収納から出してすぐに着られます。他の薬剤と組み合わせても安心の防虫剤です。
その他、着物によく使われている防虫剤には樟脳やパラジクロルベンゼンがあります。これらは一緒に使うと溶けてシミになるため、必ず同じ種類の防虫剤を入れます。
また金銀の箔や糸、刺繍には化学反応を起こし変色することがあります。樟脳やピレスロイド系の防虫剤を使いましょう。
引き出しや収納ケースに防虫剤を入れるときは必ず四隅に入れます。防虫剤は上から下へと広がるため、収納ケース上部の四隅に置きましょう。着物に直接当たらないようにたとう紙などの上に置きます。
ウコン染めの風呂敷など
生姜科のウコン草を使って染められた木綿の生地には、防虫効果や殺菌効果があります。たとう紙に入れた着物や帯を包んだり、オープンラックにかけたりできます。
タンスの中敷用のシートなどもあります。薬品などを使わず防虫効果のあるウコン染めは、着物の収納に使える便利なアイテムです。
保管するときの注意点

適切な保管を怠ると着物が傷みます。カビがはえたり染みができたり、放置すると修復ができない状況になりかねません。保管方法に注意し、ときどきは風を通すためにも着物をチェックしてみましょう。
- 正絹は自宅で洗濯ができない
- 段ボール製の箱で着物を保管しない
- 定期的に虫干しをする
カビに注意
湿気の多い場所や、湿度を調節できないケースに収納するとカビがはえます。着物にはえるカビには白カビや黒カビなどがあります。カビは放置すると生地が傷み、色が抜けたり変色したりするためこまめにチェックしましょう。
喪服のカビなど急を要する場合、応急処置をしなければなりません。白カビなど表面についているカビをブラシなどで落とします。カビ臭さを飛ばすために陰干しをしましょう。
応急処置をしたまま放置するとさらにカビが進み、着物が変色する事態になります。カビがひどくなる前に、クリーニング店などプロにお願いしましょう。
特に正絹は自宅で洗濯ができないため、カビを落としてもらうクリーニングに出さないといけません。
また、カビは着物だけでなくタンスや保管用ケースにまで広がっていることがあります。その場合、タンスや保管用のケースもしっかりとカビを落とす必要があります。カビが残っていると他の着物もカビの影響を受けるため、湿気対策は万全にしましょう。
段ボール収納に注意
着物を仕立てたとき、段ボール製の化粧箱に入れられていることがあります。保管用に使いたくなりますが、段ボール製の箱は着物の収納には不向きです。
段ボールは通気が悪く、湿気がこもりやすいためカビの原因になります。また虫もつきやすいため、段ボールで長期の保管は避けましょう。
着物は虫干しが重要
桐箪笥などしっかりと対策を施した収納をしていても、ずっと着物をいれたままにしておくとカビや変色の原因になります。定期的にタンスや収納ケースから取り出して虫干しをしましょう。
虫干しの時期
虫干しには最適な時期や時間帯があります。
- 2月
- 5月または7月後半から8月
- 10月後半から11月
前後に2日程度晴れた日が続き、湿度が低い時期に虫干しを行います。7月頃に湿気が高い地域は5月に行いましょう。10時から14時の間で1〜2時間程度、陰干しをします。
着物ハンガーにかけて虫干しをしている間に、タンスの引き出しをすべて出して風を通します。引き出しも全体を丁寧に拭いたあと、湿気を飛ばしましょう。
虫干しの方法
虫干しをする着物は、和服ハンガーにかけて直射日光が当たらないところで陰干しします。所有している着物が多いときは順番に少しずつ干しましょう。1〜2時間、風を通したら本だたみにして新しいたとう紙に入れて収納します。
晴れた日が続いていても、時間がとれない場合はエアコンのドライ機能が便利です。
着物を干す部屋を閉め切って、虫干しの30分ほど前からエアコンのドライ運転にしておきます。部屋の湿度が下がったら、着物を和服ハンガーにかけて日光が当たらない場所へ干します。
1〜2時間程度、部屋干ししたらきれいにたたみ新しいたとう紙で収納しましょう。着物が多くすべてを干せないときは、たとう紙を開き湿気を飛ばすだけでも違います。
また、湿気対策には虫干しの時期以外も、こまめに引き出しを開けて湿気を飛ばしましょう。
着る前、着た後のお手入れは

着物を着る準備や着た後のお手入れも大事です。特に着た後のお手入れは、次に着物を着るための準備をすることになります。いつまでもきれいな着物を着るために、お手入れをしましょう。
- 着る1〜2週間前出しておく
- 着た後は1日程度陰干しする
- 正絹の着物、帯や帯締めは専門のクリーニングを利用する
着物を着る前に
着物を着る前には早めにタンスや保管ケースから出して準備をします。1〜2週間前には着物だけでなく、小物もすべて取り出して状態を確認しましょう。
長襦袢には半衿をつけておきます。1日前には着物ハンガーにかけてシワをのばしニオイを飛ばします。
着物を着た後は
着物は脱いだ後すぐには片付けられません。収納の前にお手入れが必要です。脱いだ着物は1日程度、陰干ししてから片付けます。
帯や紐、長襦袢など身に付けていた小物もすべて、陰干しして湿気を飛ばしましょう。脱いですぐ湿気を含んだ状態で片付けるとカビの原因になります。
干して広げているときに袖口や裾など汚れが付いていないかチェックします。汚れの範囲が狭く、自宅で対応できるものは染み抜きなどのお手入れをします。
広範囲についた汚れや、奥までしみ込んだ汚れは無理に落とそうとせず着物専門のクリーニングを依頼しましょう。
ウールや木綿、ポリエステルの着物は洗濯表示を確認してみましょう。自宅で洗濯できるものは、手洗いや洗濯機のおしゃれ着コースなど洗濯表示に従って洗濯します。
正絹の着物は自宅で洗濯できません。必ず着物専門クリーニング店にお願いしましょう。
着物のたたみ方
着物をたとう紙に入れるときは本だたみでたたみます。衣装敷きがあれば広げて準備しましょう。衣装敷きの上にたとう紙を広げておきます。
- 衿を左、裾を右に置いてシワがないように全体をまっすぐに整えます
- 右脇縫い(手前)をまっすぐに置きます
- 下前衽(右の衽)の立褄(衿下)を脇の縫い目に合わせてたたみます
- 上前衽(左の衽)を下前の衽に重ねます
- 向こうにある左の脇縫い線を手前の右脇縫い線に重ねます
- 左袖を右袖の上に重ねます
- 背縫い、脇縫いの線がまっすぐになるように整えます
- 首の後ろの衿を衿付けに沿って折り込みます
- 左袖を袖付けの線に沿って折り、身頃の上に重ねます
- 裾を重ねて持ち袖山、肩山の位置でそろえてたたみます
- 右袖を袖付けの線に沿って身頃の下側へ折り入れます
たたんだ着物はたとう紙の上にきれいに整えて置き、たとう紙を閉じていきます。
言葉ではわかりにくいですね、youtubeにはさまざまな動画がありますので参考にしてください。
しわが気になるときは
着物を着る予定があるときは、早めに出して状態を確認しておきましょう。たたみじわが気になるときは1〜2日、着物ハンガーにかけておきます。着物の重みでしわが伸びてきれいに着られます。
しわが強くついていて、かけておいてもとれないときはアイロンをかけましょう。素材に合わせた温度で、しわの気になる部分にアイロンをあてます。アイロンをかけるときはかならず当て布を使い、こすらず軽く押さえるようにしましょう。
当て布を使わず直接アイロンをあてると、生地にテカリが出てしまいます。また、生地を傷める恐れがあるため、スチームの使用はおすすめできません。
小物のお手入れと収納

着物や帯以外に小物もお手入れして収納しましょう。汚れたまま収納するとカビや染みになり、同じタンスに収納している着物にもカビが広がってしまいます。小物も丁寧にお手入れすることが大事です。
帯や帯揚げ、帯締め
帯や帯揚げ、帯締めも1日程度、陰干しして湿気を飛ばします。汚れもチェックしましょう。
帯揚げは洗濯できるものもあります。汚れが気になるときは洗濯表示に従って洗濯します。
帯締めは房の部分を整えて収納します。帯締め専用カバーやケースを利用すると整理しやすく便利です。
帯や帯締めは自宅で洗濯できません。帯を汚れや傷から守るためにも、お出かけするときにはコートや羽織を着用しましょう。
バッグや履物のお手入れ
バッグや草履も陰干しし、汚れを落としてから片付けましょう。バッグに目立つ汚れや染みがあるときは専門のクリーニングに依頼します。
皮やエナメル素材の草履は乾いた布でほこりなどを拭き取り、充分に湿気を飛ばしてから収納します。
湿ったまま片付けるとカビの原因になるため注意しましょう。
着付け用小物
着付けに使用した腰紐や伊達締めなども陰干ししてから片付けます。洗濯できるものは表示に従って洗濯します。
絹の腰紐や伊達締めは自宅で洗濯できないものがあります。陰干しして充分に湿気を取ってから収納しましょう。
半衿や足袋は洗濯表示を確認して、洗えるものは手洗いします。お湯を使うと縮むため、必ずお水で洗いましょう。
トラブルの対処法

着物を着て出かけると思わぬ汚れが付く場合もあります。汚れ落としやしみ抜きなど、扱いが難しい正絹はプロに任せましょう。
また虫食いや穴あきなどの補修は安易に手を出さず、プロの手を借りることできれいな仕上がりになります。
- 絶対にこすらない、たたかない
- 泥汚れはぬれている間は絶対にさわらない
- プロにまかせる
雨や泥汚れに
雨の日のお出かけには、あらかじめ対策をしておくことが大事です。雨コートを用意したり、撥水防汚加工を施したりしておくとお手入れも簡単になります。
雨にあたり軽く濡れた場合、ハンカチなどで押さえて水分を取ります。このとき絶対こすらないようにしましょう。広い範囲が濡れた場合、乾くと輪染みになります。
泥汚れがごく小さい場合は、よく乾いてからブラシ等を軽く当てて泥を落とします。泥汚れはぬれている間は絶対にさわってはいけません。また、広い範囲に泥が付いている場合、素人判断は危険です。
雨にぬれてできた染みや、泥汚れはすぐに着物専門クリーニングにお願いしましょう。
汚れを落とす応急処置
お出かけ中に汚れたら応急処置をし、早めにクリーニングに出しましょう。応急処置には汚れの原因により対処の方法が異なります。汚れの原因がわからないときは無理に落とそうとせず、着物専門のクリーニングにお願いしましょう。
汚れには水溶性の汚れ、油性の汚れ、油性と水性の混合汚れなどがあります。
水溶性の汚れはジュースやしょうゆ、コーヒーなどです。表面の水分をティッシュペーパーなどに吸い取ります。乾いたタオルを裏に当て、表から濡らした布で軽く押さえタオルへ汚れを移しましょう。
油性の汚れにはドレッシングやソースがあります。油性の汚れや混合汚れは、汚れが広がったり、しみ込んだりしないように表面の汚れをティッシュペーパーなどで軽くつまみ取ります。繊維の奥に入り込むと落ちにくくなるため、たたくのは避けましょう。
汚れが広範囲にわたる場合は、すぐに着物専門クリーニングへ依頼しましょう。
カビや虫食いなどプロの手を
保管に気を配っていても虫食いのトラブルにあうことがあります。虫食いはかけつぎで修理できます。着物を仕立てたときに残布があれば証紙と一緒に戻してもらえます。その残布を着物と一緒に収納しておきましょう。残布を使って修理できるので便利です。
白カビはブラシで落とすことにより応急処置ができますが、それではカビの菌は残ったままです。また黒カビや茶色に変色したカビは、自宅で対処はできません。小さなカビでも放置しておくとどんどん広がっていきます。
着物全体のカビはもちろん、少しのカビや臭いが感じられたらクリーニングを依頼しましょう。
まとめ
着物は丁寧なメンテナンスと保管で長く着られます、正絹の着物はとてもデリケートで、カビや染みなど悩まされるますが、虫や湿気など気を付けて適切に保管すると世代を超えて長く着られることができるのも正絹の着物です。
着物は決して安いものではありません、定期的に虫干しやお手入れなど丁寧にメンテナンスしていつでも心地よい着物生活を送れるようにしましょう。

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